Saturday, July 14, 2012

フルムーンパーティー














日本にいる時には、クラブなんて混んでいるだけだし、煙草臭いし、わざわざ金と時間を浪費するものではないと思っている私だが、海外でああいった場に行くのはそれほど嫌いでもなかったりする。むしろ、積極的に行きたいほうである。

ちょうど、国内では風俗に行かない主義だが、海外でははめを外す男性と同じ
ようなものだろう。

普段の旅行だとそうはいかない。基本的に私の旅行は一人旅だからだ。

焼き肉も、バーも、ちょっといいレストランも、カラオケも、牛丼屋も、寿司屋も、どこへだって単独で行く私でも、さすがにクラブとなると考えてしまう。
クラブ街の治安というのは、たいていどこの国でも悪いものだし、トラブルを起こしそうな若者だって、そこらの観光地よりははるかに集まっている。

だから、久しぶりの友人とのタイ旅行は、クラブに足を踏み入れる絶好のチャンスだった。

フルムーンパーティーの存在はなんとなく知っていた。

満月の夜、ビーチで催される盛大なパーティー。世界中からジャンキーが集まってくる。

アウトローたちを見るのが、もう趣味と言ってもいいほど大好きな私にとって、かなり魅力のあるイベントである。

タイを宣伝する時の文句の一つとして定番の『ザ・ビーチ』にも少し登場したパーティーなのだとか。この文句には 飽食気味だが、興味を惹かれるのもまた事実である。

前置きが長くなってしまった。

ここからはフルムーンパーティー体験記に移ります。

パーティーが開催されるのはパンガン島という島で、サムイ島からスピードボートで15分くらいの距離である。

このボートがくせ者で、もうちょっとで転覆するんじゃないかってくらいに揺れるのだ。だが、着く前からお祭り気分の乗客たちは、まるでジェットコースターであるかのように楽しんでいる。カップルだったら、いちゃつく材料に利用していたりもする。人間観察をするには最高の環境だ。

ボートを降りると、暗闇に浮き出た蛍光色の世界が広がる。

ずらりと並ぶ出店は、どれもカラフルに彩られている。まだ祭りに馴染んでいない人々はそれらの出店で買った蛍光色を身につけ、パーティー用の装いを完成させるのだ。

十分ほど歩いて、ようやくメイン会場のビーチにたどり着いた。

場内はいくつかに分かれている。とはいっても、場所がビーチなので壁などはあるはずもなく、各自好きな音楽が流れている場所で足を止め、踊ったり騒いだりするのだ。いたってシンプルである。

端から端まで探索して、私たちが落ち着いたのは薪の近くだった。

酒だか、もっと科学的なものだかは定かではないのだが、すっかり出来上がった人たちは、燃え盛る炎の下を、リンボーダンスでくぐっていた。
まるで、火の輪をくぐるサーカスの動物みたいに。

彼らだけではない。パーティーにいる人間たちは、皆が皆、妙に野性的で、原始的だった。


来ている人も、やっていることも、普通のレイヴ・イベントと何ら変わりはないはずなのに、ただパンガン島のビーチいうだけでこんなにも『のび太の日本誕生』の宴シーンを連想させるものになってしまうのはどうしてだろう。

東南アジア特有のむっとした空気がそうさせるのだろうか?

これまで私は薪になんて興味はなかった。きれいだなんてこれっぽっちも思わなかった。だが、この旅で私は薪に惚れた。炎に惚れた。どんなものにもない、独特の動きをする炎に畏怖の念を抱いた。

周囲とくらべて落ち着き払っていた私だけれど、多少は野生に戻っていたのかもしれない。

私はふと、家の冷蔵庫で眠っている「ギャートルズの肉」のことを思い出した。あまりの面白さに思わず注文したものの、特別食欲をそそられず、まだ味わっていないのだ。

あれの賞味期限はいつまでだろう?

踊り狂う人々の中、ぼんやりとそんなことを考えていた。

野生に戻ったはずなのに、ちっともノリが良くならない私って一体なんなのだろう。

まあ、動物にだっていろいろな性格があるからな。原始時代にだって私みたいな人間はいただろう。

宴の真っ最中なのに、石板に彫られた変わった絵を見に行きたいだとか、今年の冬はどんな毛皮を着ようかとか考える協調性のない奴が。

今も昔もヒトという生物は大して変わらないんだということが、フルムーンパーティーに参加してみてよくわかった。

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