Monday, June 4, 2012

ミッドナイト・イン・パリ





早くも今年のナンバーワン映画が決まってしまったかもしれない。

ウディ・アレンの新作『ミッドナイト・イン・パリ』を観はじめて二十分くらいで、私はそんなことを考えはじめた。

映画館の一番前の席から、ただでさえ痛い首に鞭を打って見上げていたにも関わらず。

上映時間中、私はずっと幸福感に満たされていた。

主人公のジルは懐古趣味のアメリカ人作家。二十年代のパリに憧れてやまない。

まず、彼と私の趣味が極めて似ているため、通常の映画よりもはるかに感情移入するのが容易かった(まあ、私は雨が降ったら傘のお世話になりたいのだが)。

だって、彼にとって心のヒーローは、ヘミングウェイやフィッツジェラルドなどのロスト・ジェネレーションの作家たち。私は自分以外にこんな人間を知らない。

コール・ポーターの音楽が好きだし、ガートルード・スタインに作品を読んでもらいたいと思っている。パリ旅行へ行ったなら、定番の名所よりも、作家たちがたむろしたブラッスリーや、シェイクスピア&カンパニー書店を観光したいと思っている。

パリに行った時は、私もまったく同じところを見て回ったもんだわよ。

そんな彼が黄金の20年代のパリにタイムスリップしてしまうのだから、もう羨ましいのなんのって!

あれだけ映画の登場人物を羨んだのは、後にも先にもこれ一度きりだろう。

多くの人が言っていることだが、この映画の面白さは、やっぱり続々登場する20年代の有名人たちにあるだろう。

先述した四人の他にも、ピカソ、ゼルダ、ダリ、マン・レイ、ルイス・ブニュエル、T.Sエリオット、ジョセフィン・ベーカーなど、あの時代といえば!の豪華な顔ぶれが大集結している。

もちろん私は大興奮。自分の妄想がそのまま具現化されたかのよう。

私のような変わった趣味を持つ人間がそれほどいるとは思えないのに、会場は満員。そうでなければ一番前の席なんかに座らない。

スクリーンに有名人たちが登場するたび、観客から笑い声が漏れる。つまり、みんな20年代を彩ったヒーローやヒロインに多少なりとも興味があるということだろう。

この作品は観光映画としての役割を模範的なくらいに果たしている。

007シリーズや、『ブルー・ハワイ』『ローマの休日』などと同じように。

冒頭のシーンなんて、もはや旅番組のパロディである。主要な観光名所はほぼ登場する。

旅行が夢物語ではなくなった今の時代にこういう作品を撮るなんて、かえって新しい。

これからパリに行く予定の人は是が非でも観ていてだきたい。人によってはガイドブックよりも参考になるかもしれない。

20年代に詳しくない方は、映画館に行く前にこの本を読んでみるといいですよ。





『アーティスト』といい、『ボードウォーク・エンパイア』といい、リメイク版『華麗なるギャツビー』といい、なぜか映像界では20年代が熱い。

早いところオークションでヴィンテージのフラッパー・ドレスを買ってしまわないと、今に寝上がりしてしまいそうだ。

『ミッドナイト・イン・パリ」の影響で、かなりの人が私と同じ時代に魅せられてしまったに決まっているのだし。


ウディ・アレン監督、関係者様各位。ここで言っても伝わるはずはありませんが、是非とも南仏版で続編を作ってください。舞台はもちろんアンティーブとジュアン・レ・パン。ピカソやフィッツジェラルド夫妻、ヘミングウェイにはもちろん活躍してもらうということで。新たにマーフィー夫妻なども登場してくれたらうれしい。

ジルにはもちろん、私も泊まったベルズリブズあたりに泊まってもらう。このホテルはかつてフィッツジェラルドの邸宅だったのだ。

あ、次の記事ではジュアン・レ・パンの素晴らしさについても言及したいと思う。昔書きそびれてしまったのだ。

興味のある方はそちらも読んでください。

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