Saturday, August 13, 2011

Jazz A Juan




「海外で何か音楽フェスに参加したい!」

かねてよりそう思っていた私が目を付けたのが、「 Jazz A Juan」だった。

これに合わせて旅を計画したわけではないが、私がコートダジュールにいる時、この興味深いイベントが開催されると小耳にはさんだわけだ。偶然にも。

「Jazz A Juan」のJuanはジュアン・レ・パンのジュアンだ。

唯一読める言葉である日本語のブログを、私はただ一つしか読まない。

そのただ一つのブログというのが、ジュアン・レ・パン在住の日本人女性が綴っていた『コートダジュールの休息』というものなのだ。残念ながらこのブログはもう更新されていないが、その情報の事細かは他の追従を許さない。そして、写真もまたきれい。

もともとこの小さな街には興味があった。しかし、なにしろ情報が少ない。ガイドブックにもほとんど載っていないのだ。人に尋ねてみても、誰もが「知らない」と口を揃える。

そんな未知の場所に足を踏み入れる勇気をくれたのが、このブログだったのだ。

結果から言おう。最高だった。行って本当に良かった。

街に着いた時から、私のテンションは否応なしに高まった。

会場の松の木公園に近づけば近づくほど、空気を震わすリズムが響くのだ。その時はまだリハーサルだったから、きっと本番はもっとすごいのだろう。

お楽しみは夜に取っておいて、ひとまず私は一泊だけ予約していた五つ星ホテルに向かった。

ホテルに荷物を置き、ビーチでのんびりするなどして、夜に十時すぎに会場入りしようと思ったのだが、なんと!チケットがソールドアウトだったのだ!

コンシェルジュに「どうにかなりませんか?」と相談したら、返ってきたのは「明日のチケットならば」という悲しい返答。

それでは遅いのだ。明日の今頃なんて、私は飛行機の中でドラールとハルシオンとソラナックスがもたらす眠りを待ちわびながら、読みかけの本を開いていることだろう。

隙間から会場内を覗いてみた。

物凄い人!盛り上がり!

だが待てよ、音の良さは会場内も外もそれほど変わらないのでは?

だったら、人ごみを避けて会場横のベンチで、軽食でも食べながら聴くというのも悪くない。

実際に、会場周辺の広場には、私のような人たちでごった返している。

ピクニックのようにシートを広げている者、公園の遊具でジャズのリズムに合わせるかのように遊び回る親子、塀をよじ登り、何とか会場を覗こうとしているおっさん。

人間観察にはもってこいだが、これではどうも落ち着かない。

そんな時、私は最高のアイデアを思いついてしまったのだ。

私はすぐさまホテルの部屋まで駆け戻り、ささやかなテラスに通じる扉を開けた。

思っていたとおり!

そのホテルはちょうど松の木公園の真横にあり、中でも私の部屋はそこから目と鼻の先なのである。

人いきれでむっとするような外より、テラスのほうが余程涼しい。日焼けで火照った頬を乾いた風がご褒美をくれるみたいに撫でてゆく。
これから始まる儀式のために、とびきり熱い風呂に入りに行った。
水滴と汗とを拭き、厚手のバスローブに身を包んだだけの思い切り行儀の悪い格好になる。冷蔵庫からきんきんに冷えたエヴィアンを取り出し、化粧品や小説、スマートフォンなんかと一緒にテーブルに並べた。さあ、準備万端だ。

会場はちょうど盛り上がりを見せている。ここからでも音のほうはバッチリだ。ステージが見えないのはそれほど気にならない。

極上の音楽を、私はおそらく最も気楽なやり方で満喫した。

パックをしたり、歩き疲れた脚をマッサージしたり、小説を読んでみたり、翌日の計画を立ててみたり。

あの数時間は人生の中で一、二を争うほどに贅沢な時間だったと思う。すっかり音楽を独占したような気になったくらいだ。

その場には、私の疎ましく思うものは何一つとして存在していない。

充実した孤独だった。これでまた来週から頑張れると思った。

これまで私は、ホテルなんてどうでもいいと思っていたけれど、今回のことで考えが変わった。

一泊五つ星、残りはエコノミー。この組み合わせにはまりそうだ。

そして、ホテルもそうだが、ジュアンだ。レ・パンは想像していた通りーーいや、それ以上に最高の街だった。

それについてはまた後日。

6 comments:

  1. 音だけで楽しむのもありなのですね
    自分は見たいと思ってしまいます

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  2. 杏里さん、こんにちは~。
    音だけを自分のペース、リズムで好きなように楽しむってのもありですよね。
    自分も今夜は、花火大会を音だけで楽しむつもりです。
    まあ言い訳で、一緒に行く人がいないだけですが。(笑)

    う~っ、久しぶりにコメント出来てよかった。

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  3. 豊かな時間を過ごせたようですね

    オメデトさんです

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  4. やっぱり君は素敵な人だ。

    うれしく思う。

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