Saturday, February 26, 2011

ヒッピーおばさんのアクセサリー






「ステラおばさんのクッキー」をもじったタイトルを付けたのだが、きっと誰にも気がついてもらえないんだろうな。

まあ、別にいいんだけれど。



渋谷のとある場所に、エスニック雑貨の店ばかりが集まった一角がある。

その中の一軒、有名ホルモン焼き屋の二階にあるアクセサリーショップは、最近行った店の中でも一番不思議な空間だった。

もはやどのくらいの広さがあるのかさえわからないほど、商品が文字通り隙間無く並べられた店内。世界中から集めてきたもののようだ。アジア、アフリカ、中東、南米。そしてここは日本。考えてみたら妙だ。レジの向こうには小さな作業場があり、そこでは六十歳くらいのおばさんがせっせとアクセサリー作りに勤しんでいる。

小柄で、化粧っ気がなく、女っぽさは一切感じないおばさん。女性運動家や、冒険家なんかにいそうなタイプだ。

現代のヒッピー達が集まるようなビーチパーティーのチラシは、彼女もまた昔はそういった若者だったことを思い起こさせる。

世代的にもちょうどそうだ。レザーや金属のクラフトができるのは、昔からの針金細工の賜物だろう。ヒッピーといえば針金細工だ。母親の友達のヒッピーもそうやって生活していたと聞いているし。

彼女を見てから私は、ものすごくヒッピーに興味がある。

そりゃあ、昔の写真や映像なんかではいくらでも見たことがあるが、本物の「元ヒッピー」を見るのは生まれて初めてだ。

さすがに「ヒッピーだったんですか?」と訊くことはできなかった。しかし、いつか訊けるくらい親しくなりたい。それにはまず常連になることだ。

とりあえず、おばさんの手作りアクセサリーを買うことにした。それが、画像の黒いフリンジつきのものである。

初めはピースマークがついていたわけではなかった。アクセサリー作りに目覚めてしまった私は」、たまたま今さっき近くの東急ハンズでアクセサリーパーツを買ってきていたのだ。うれしいことに、頼んだらおばさんはそれを「ちょいちょい」と取り付けてくれた。しかも無料で。さらに、「このパーツ、どこに売っているんですか?」とまで訊いてくれた。ちょっと嬉しかった。

お礼に私は、ここ最近で集まってしまった、二万円分ほどのアクセサリーパーツの領収書を置いていくことにした。ぜひとも経費の足しにしてほしい。なるべく利益を出して、少しでも長くお店を続けて行ってほしい。そんな風に思ったのだ。

だが、そんなことは余計なお世話だったかもしれない。

ああみえておばさんはあの雑居ビルのオーナーか何かで、たとえ店に売り上げなんてなくても楽に暮らしていけるのかもしれない。そういえば、いかにも大家さんといった顔をしていたではないか。またずれ荘の大家さんによく似ていた。

どうやってあのビルを、雑居ビルとはいえ、渋谷の中でも便利な場所にあるあんなビルを手に入れたのだろう?恵まれた環境に生まれついたのだろうか?そう考えると、ヒッピー時代の気楽な放浪生活にも安易に説明がつく。女性が一人で世界中を飛び回るのには、ある程度のお金がいるから。お嬢様というのではなく、旦那がビルを持っているのだろうか?もしや、あのビルだけではなくて周辺一帯の地主だったりして……なんてことも考えた。しかし、だとしたらわざわざあんなに煙がもくもくの、はっきり言って匂いがけっこう強烈なホルモン焼き屋のすぐ上を、自らの城にしたりするだろうか?

そう考えると、あのおばさんは大家でも地主でも何でも無く、単に家賃が安いからあそこを借りているのかもしれない、と思えてくる。もしくは、下のホルモン焼き屋をやっているのは、息子など身内なのかもしれない。腹を痛めて生んだ子が焼いたものの匂いなら、そう不快ということもあるまい。少なくとも他人が焼くよりは。

単純にホルモンの匂いが大好きで、あの場所を選んだという可能性もある。ちょうど私のようにホルモンを愛しているのかもしれない。

いずれにしても、ホルモンが嫌いならばあの場所で店を開いたりはしないはずだ。

ということは、あのおばさんはホルモンがきっと好きで、旅行が好きで世界中を旅していて、アクセサリー作りも好きということになる。

なんて私と気が合いそうなんだろう!!!

是非ともお友達になりたいものである。たかだか四十歳程度の年の差なんて、大したことではないじゃないか。







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