Saturday, February 19, 2011

タクシードライバー



マーク・ジェイコブスのおかげで、というか、マーク・ジェイコブスのせいで、近頃『タクシードライバー』がファッショナブルな映画として、再注目を浴びている。

今期のイメージ・ソースが、ジョディ・フォスター演じるアイリスだからだという。

そのため、近頃は至る所で彼女の写真を見かけるようになった。当然久しぶりに見てみたいと思った。もう何度も見ているけれど、飽きない類いの作品だ。やはり名作なのだろう。

実を言うと、私は『タクシードライバー』にはなかなか思い入れがある。きっとあれが、初めて観終わった後にもやもやする物語の味わい深さを与えてくれた作品だ。

最初に真剣に観たのは、15歳か16歳の頃だったと思う。当時はアイリスと年齢が近かったので、どちらかといえば彼女に肩入れをしながら見ていた。こんなにませた子がいるものか、と思いながらも。

主人公トラヴィスの性格の悪さに苛立った。少女漫画やシンデレラストーリーの主人公の性格の悪さも相当なものだと思っていたが、彼の場合はまた種類が違っていた。実際周りにもいそうなところが明らかに違っていたのだ。

初めてのデートでポルノ映画感に連れて行かれた女性に、心から同情した。売店のお姉さんを見て、「ずいぶん大変なところで働いているものだ。実際こういう所で仕事をする場合、給料なんかは普通のバイトよりもいいのだろうか?」などと考えを巡らせたものだった。まさかその数年後に自分がポルノに出演するなんて思ってもみなかった。

当時の私の目には、トラヴィスは最低の男としか映らなかった。卑屈なくせに自信過剰で、他人の悪いところばかり見ようとする。そんなやつが(ここから先、多少ネタバレありです)



散々暴れ回った挙げ句、最後には結局英雄視されて、振られた女にも手のひらを返したように優しくされるなんて、どう考えても納得がいかなかった。急に態度を変えた女にも腹が立った。

性格の悪い奴ばかりしか出てこない映画だと思った。

そしてそこがたまらなく不愉快で、それ以上に愉快だった。

すっきりはしないが、腹持ちはよかった。それからしばらく考えさせてくれた。

こういう映画の楽しみ方もあるんだ、と思った。

それから何度か観た。生きていると時々、わざわざ嫌な感じを求めることだってある。私の中では、暗くて性格の悪い人間を見て楽しみたいのなら、『タクシードライバー』か、『永沢君』かということになった。

そして、また今観てみると、以前とは違った楽しみ方ができることを発見した。

トラヴィスの言動に「わかるよ、わかる」と思わず頷いてしまうのだ。

いつの間にか私の年齢は、12歳の娼婦ではなく、彼とほぼ同じになった。

昔の自分にとっては、二十代の半ば過ぎなんて、おっさんとおばさんだった。

したがって、『タクシードライバー』も、人生に嫌気がさし、未来に希望の無い、枯れたおっさんの物語だった。

しかし今見ると彼は別におっさんではない。何者かにはなりたいが、何になりたいかはわからないという、非常に若者らしい若者だ。

彼は人生に嫌気がさしてはいるが、希望を捨てたわけでもない。だからこそ何を見てもイライラするのだろう。

こういう若者が、今現在も大勢いる。身の回りにもいる。自分自身にすらそういった面はある。

改めて観た『タクシードライバー」は思いのほか親しみやすい物語に変わっていた。

しかし、かといって、ものすごくリアリティのある物語かというと、そういうわけでもない。「お話」として必要な非現実性も充分に兼ね備えている。

だって、実際にデ・ニーロみたいなタクシードライバーなんて見たことはない。日本でもニューヨークでもお目にかかれない。

たいてい彼らはもっと年を取っているし、あんなに華もないし、ずっとずっとまともだ。セクシーな少女娼婦なんて、滅多なことでは存在しない。

だから映画として面白いのだ。

確かにいい映画だ。あんなにいい映画なのに、最近ただのお洒落映画として扱われている。衣装だけを「カラフルでかわいい」と思って、普段はラブストーリーばかりしか見ない甘ったるい女がDVDを買ったり借りたりすることを想像してみると、思わず小鼻が膨らんでしまう。

血みどろの見せ場に彼女たちはどういう反応を示すだろうか?

考えていたものと違う……、と思うのだろうか?

私も十分性格が悪いと思う。

そうそう。素朴な疑問なのだけれど、突然モヒカンにしたトラヴィスを、タクシー会社の同僚たちはどう思ったのか?

私が同僚の立場だったら、新聞に載るような行動をしたこと以上に驚くと思うのだが。





















































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































4 comments:

  1. 私の場合、見終わった後にもやもやする物語は、
    最近のものだと『グラン・トリノ』。
    また、わざわざ嫌な感じを求める場合は、
    『ファニーゲーム』を見ます。

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  2. こんばんは。

    私、一度だけないたことがあります。映画館で。
    理解できた、というか、個人的にわかったような気がしたというか、この監督の昨今の作品は、ただ底にある、それについて、さらりと、置いてくれているように思います。
    クリント・イーストウッドつながりで、「ミリオンダラー・ベイビー」。アカデミー賞ものに泣いたことに不覚です。

    今日は「ヒヤアフター」を観て参りました。

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  3. 完全懲悪がスキなので、
    めんどくさそうな映画は全然見てない。

    今度見てみようかな( ´_ゝ`)

    気が向いたらおすすめ紹介してくださいmD_Dm

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