Friday, January 21, 2011

ショーディッチの強面カフェ




ロンドンの話題ばかりで申し訳ないが(アムステルダムにも行ったのだが、それはまた後ほど。メモリーカードがぶっ壊れていて、画像を載せられないのだ)、まあ、誰もそれほどの情熱をこのブログ向けていないであろうから、ここはしつこく繰り返させていただく。

とにかく、ショーディッチはロンドンの中でも最高の街だった。

ちょっとブルックリンに似ていた。あちらよりもっとエスニックな感じではあるのだが。

たった五日間の滞在中、二日はショーディッチ方面に足を運んだ。それほど気に入ったということだ。

そう。たった五日しかないものだから(それでもこの間行ったパリの三日半と比べたら、このまま住むことだってできるんじゃ?と錯覚するくらい長く感じたのだが)、毎日朝早くから行動した。

朝食を出先で食べるなんて、絶対に日本ではしない。だけど、ロンドンでは致し方なかった。

なぜなら、ホテルについていた朝食が、泣きたくなるくらい貧弱なものだったからだ。

思いのほか美味しいもの揃いだったロンドンだが、このホテルの朝食は、美味しい、不味い以前の問題だ。

味のない、数種類の冷えたパンとジャム、バター、そして、砂糖漬けのフルーツ以外には何もないのだから。

ただでさえ米が恋しい生粋の日本人にとって、これは死活問題である。せめてしょっぱいものを食べなければ、慣れない土地でエネルギッシュに過ごすなんて、とてもじゃないけれど無理な話だ。

その日も、朝食はショーディッチで食べようと思って宿を出た。目的はギャラリー巡りだった。

まずはお目当てのギャラリーを探し当て、その近くにある適当な店で朝食に有り付こうと考えた。どんなジャンクなものだって、ホテルの甘いだけの朝食よりはましだ。

しかし、探しても探してもギャラリーはみつからない。どうやら、この不景気でつぶれてしまったようだ。

ショーディッチは宿泊しているケンジントンよりもだいぶ寒い(気がした)。

風は冷たいし、腹は減るし、プラットフォームのハイヒールのせいもあって、足もとがふらついてくる。

ギャラリー探しは一時中断して、適当なカフェにでも入って暖まろうと思った。が、どの店も準備中ばかりだ。感じのいいレストランは近くにいくらでもあるというのに。

そんな時、ふと目に入った「COFFEE」の文字。いかにも手書き風の、ストリート感たっぷりの、はっきりいって不良っぽい感じの看板にそう書かれている。しかもその店はどう見ても洋服屋だ。

こわごわ中に入ってみる。

ガタイのいい、脱いだら入れ墨でも入っていそうな兄ちゃんが、丁寧だが、一般的なイギリス紳士よりは若干ぶっきらぼうに挨拶ををする。笑顔はあるが、ビッグ・スマイルではない。わずかな微笑み程度。

店内は洋服屋とカフェが一緒くたになっているのだが、商品のテイストはものすごくスケーター風で、私など見るからに場違いな感じだ。
だが、たまらなく腹が減っているので、とりあえず、コーヒーとメキシカン・サンド、自家製スープを頼む。

自家製?一見美味しそうだが、あの強面の兄ちゃんが手作りしているのか……。そう考えると、すごく申し訳ないが、あまり味には期待してはいけない気がしてくる。

きっと、安スーパーで買ってきたような固いパンとゴムみたいなハム、味気ないチーズに、甘辛いソースがかかっているから「メキシカン・サンド」なのだろう。

スープは、キャンベル・スープとかきっとそういうものに決まっている。いいんだ、別に。イラストでしか見た事の無いあのスープを実際に飲めるなんて光栄ではないか。まあ、イギリスでもあのスープがメジャーなのかどうかは知らないが。

それに、もしも信じられないほどに不味かったら、それこそイギリスに来たかいがあるというものだ。今回の旅の目的の一つに「イギリスの料理は本当に不味いのか、それを検証してくる」ことも含まれているのだから。

そんなことを考えていると、まずはコーヒーが運ばれてきた。想像通りだが、でかい。

写真ではわからないだろうが、だいぶでかい。

想像と違う点もある。ものすごくいい匂い。なんて本格的なんだろう。表面もマーブル模様も、わざわざそう仕上げなくてはできないような可愛らしさだ。ちょっとメイド喫茶を思い出した。

一口飲む。思わず黙り込んでしまうほどうまい。寒かったせいもあるし、腹が減っていたせいもあるが、どうやらそれだけではなさそうだ。

続いて、メキシカン・サンドと自家製スープが運ばれてくる。

やはりでかい。やはりいい匂い。

そしてやはり——美味しかった。

心から兄ちゃんに申し訳ないと思った。

パンの焼き具合やソース辛さなどをいちいち尋ねてきた時点で、高いレベルの味が期待できていたはずなのに。他人を見た目で判断してしまうとは。

確かに女界においても、派手なギャルが意外と料理上手だったりするのだ。

それにしても、あのスープとパンの味は忘れられない。

ガーリックのきいた、タイ風であり、イタリアン風でもあるスープ。外はサクッとしていて、中はふんわりと柔らかい、味わい深いパン。分厚いハム。

驚くべき量だったのに、ぺろりと平らげてしまった。

ここから私の食欲はちょっとまずいことになった。

せっかく約3・5キロのダイエットに成功していたというのに、日本に帰ってきたら、1・5キロ増えていて、結局はマイナス二キロで止まっている。

きっと再来月のニューヨークでも、食べ物との素敵な出会いがあるに違いない。旅行中は食べてもいいことにしている。いっぱい歩くし、体力勝負だからだ。そんなわけなので、その時に食べても許されるように、昨日からまたダイエットを頑張っている次第である。

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