Wednesday, June 23, 2010

最低で最高のメニュー

そもそもはしゃぶしゃぶのつもりだった。しかし時刻は午前四時。どの店に行ってもラストオーダーが終わってしまっていた。仕方なく入ったのは、とある典型的な大衆居酒屋だった。

メニュー数がとても豊富で、字面がら見るとどれも美味しそうだった。値段もそれほど安すぎず、信用できる金額だ。限界に近いほど空腹だったこともあって私たちの期待は最高潮まで高まっていた。

七人で十七、八点は頼んだと思う。イカメンチ、チーズ揚げ、しゃぶしゃぶサラダ、レバ刺し、クリーム・コロッケ、魚、肉、その他いろいろ。

はじめにきたのはこの小エビのフライだった。


からっと揚がっていて見るからに美味しそうだ。レモンを絞り、箸でつまむ。熱々だ。いい匂い。ああ、早く食べたいと口に運ぶ。

一口噛むと、私は塩の瓶に手を伸ばした。見ると隣の知人もまったく同じ行動をとっている。

誰かが言った。「塩味、足りないね」


続いて運ばれてきたクリーム・コロッケはソースがついてきたのでそれをつけて食べた。揚がり具合はなかなかよかった。味はどこまでもソースだった。これはいいとしよう。

それからは揚げ物が続く。こんなフライに、





チーズ揚げ、小魚のフライ、イカメンチ。それから串焼きがいくつか。

どれもこれも味がない。素材は悪くないのだが、とにかく味がないのだ。そのせいかテーブルにはたっぷり調味料があった。頼んだらゆずコショウも持ってきてくれた。何品か口と腹に入れ終わった頃には誰もが学んで、それぞれの好みで塩を、コショウを、七味を、ソースをかけた。

テーブルの主役は調味料だった。それらは初めテーブルの隅にあったが、いつの間にか真ん中の特等席を陣取っていた。

私は自分に言い聞かせた。ここはイギリスなんだ。ずっと行きたいと思っているロンドンだ。食べる人が各々の好みで味をつけられるように、わざと味をつけていないんだ。料理人の優しさだ。個人主義を尊重してくれているんだ。

いつかはイギリスに行くんじゃないか。だったら今日のこの経験はいい予行練習になるさ。

また塩をふりながら、私はそう思い続けた。そうでないと大量に(それも私が誰よりも多く)注文してしまった料理たちはなかなか片付いてくれないだろう。

テーブルの上には食べかけの揚げ物類がまだいくらでも余っていたが、満腹の私たちをあざ笑うかのように次のメニューが運ばれてきた。

すごく柔らかくて、まるでヌーブラみたいな豚足。



どうやったらこういう料理が出来上がるか不思議でたまらなかった。

この店は食べ物のくる順番も明らかにおかしかった。カルパッチョが、サラダが、今頃になって登場した。

しゃぶしゃぶサラダはどう考えても肉が厚すぎるし、



カルパッチョは、この店にしてはめずらしく味が濃かったが、なぜかマヨネーズがたっぷりかかっていた。

極めつけはこのセクシー・チャーハンだ。


なんというえげつない形だろう。せいぜいおっぱいの形だと思っていたのに。

もう誰もが食欲をなくしていた。まずくはなかった。味だってちゃんとあった。だが、私たちは結局食べ物を粗末にすることになってしまった。

思えばこの店は従業員のテンションもどこかおかしかった。

「セキリュティ」と書かれたTシャツを着ていたり、しゃぶしゃぶサラダを「はい、シャブで〜す」とすごく陽気に運んできたのだから。

きっとイギリスのほうが満足のいくものが食べられると思う。これをクリアしたのだから、油でぎとぎとだという噂のフィッシュ・アンド・チップスだって美味しく食べられるはずだ。

そう考えると決して損をした訳ではない。

10 comments:

  1. 鈴木さんの感性も、
    そして、この店のスタイルも、
    もう、最高!

    こんな出会いをしてみたいもんだ。

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  2. ウインナーの先っぽからなんか出てるね

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  3. ウチらのところだと、
    まず間違いなく「とんこつラーメン」!!
    牛丼でもいいかなー

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  4. ま、ここは一つ未来のイギリス旅行の前哨戦というコトで…

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  5. どこのお店だか非常に気になります

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  6. 鈴木さん

    先週のヤツにコメントしたから、再度。。。

    はじめまして、samuこと直登だよ。(気軽に挨拶、アメリカン的な)

    サーフィンしてるあいだに、やっとたどり着いたよ。

    すごく内容の濃い話題で、なんか心がBeatingだぜ。

    これが、
    この『たわけ同盟』が、
    俺のハートをキックし、
    そして、曲のインスピレーションが沸いた。

    サンクス!! 鈴木さん。

    またなーー~!!

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  7. 居酒屋の雰囲気は好きです
    杏里さんは確かお酒あまり飲めないんですね
    イギリス羨ましいです

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  8. ロンドンですか。楽しいですよ、小さな街で。
    パブで1パイントのギネスが私の食事でした。
    サンドイッチは美味かった。
    フィッシュ&チップス? 地獄のような胸焼け
    です。

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  9. あなたは本当に美しい... Legionsaインドネシアから

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