Monday, May 31, 2010

憧れのウイスキー


ウイスキーの瓶ばかり眺めて過ごした頃があった。幼稚園だとか、小学校低学年だとか、たしかそれくらいだった。

まだ自分の部屋のなかった私は物置に居場所を求め、そこに籠って何かをするのが好きだった。
物置といっても五畳程度の部屋で、そこにあったものは、今考えてみればその後の私の人格形成に多いに影響を与えていたようだ。
その小さな空間には、まずピアノがあり、百科事典や世界文学全集などの分厚い本があり、『サザエさん』をはじめとする、古い漫画があり、おびただしい数のジャズのレコードがあり、ぶら下がり健康器があり、風呂桶一杯分くらいのレゴブロックがあり、着せ替え人形があり、宇宙に関する雑誌が山と積まれていた。
読書が好きなのはまぎれもなくこの部屋のおかげだし、古い歌に親しみを覚えるのだってそうだ。レコードやレゴブロックは私の収集癖は遺伝なんだということを証明してくれる格好の材料だ。ここで着せ替え人形遊びに没頭しなかったら、今みたいに洋服に金のかかる人間に成長しなかっただろう。

物置には新しい物なんて何もなかった。良くも悪くも私を古いもの好きに育て上げてくれた物置を、今こんなに懐かしく思うのはやっぱり懐古趣味のせいだろうか。
ウイスキーし話を戻そう。そもそもなんでウイスキーのことなんて言い出したのかというと、先日実家に行った時に(物置があった家からは引っ越してしまったのだが)ウイスキーコレクションのうち、わずか数本だけが、棚の中に大事そうに保管されているのをしたからなのだ。

両親は私と同じでアルコールがほとんど飲めない。コレクションは父親のそのまた父親のもので、亡くなった人間が大切にしていたものということで全部を捨ててしまうことはどうしてもできなかったらしい。私の懐古趣味は物置のせいだけではなかったみたいだ。
小さい頃の私は、ウイスキーに対してある種ロマンティックな思いを抱いていた。酒というのは大人だけに許された高級な趣味だと思っていた。周囲の誰も酒を飲まない環境に育ったからだろう。その頃はドヤ街の存在も、あそこにいる人々が大の酒好きだということも知らず、酒を飲む人種というのは金持ちでものすごく博学に違いないと信じて疑わなかった。

特にウイスキーやブランデーなんてハイカラの極みを行くようなものだった。ああいうものを愛好する人間は、羽根ペンで手紙でも書きながら(できれば軍隊時代の知り合いに)ウイスキーをちびちびやるのだと思っていた。葉巻の甘い香りが漂う部屋には猟銃が飾ってあるものだと思っていた。
うちの祖父も父も母もそういう人間ではないのでウイスキーは封を開けられないまま物置に眠るはめになったのだと。
祖父はきっと私の夢想するような人物と交流があり(たぶん勤め先の偉い人かなにか)、彼がコレクションしていたのはきっとそういう人からもらった高級なウイスキーだとばかり思っていた。

きっと昔の私は、今と違ってそのようなかびの生えた洋風の生活に憧れていたのだと思う。学習机なんて素っ気ないものは絶対に嫌だったから、一年生になった時、親にねだって買ってもらったのはライディング・デスクだったし、どこからか見つけてきた、止まった懐中時計を大事に持っていた。

やがて成長して、物置のないもっと実質的な家に引っ越し、ライディング・デスクはごく普通の学習机に買い替えた頃には、ウイスキーのことなんてすっかり忘れてしまっていた。
本当にこの間、あの埃にまみれた瓶を見るまではすっかり忘れていたのだ。しかし一度思い出に触れると、それは以前より輝きを増した。古びた箱に入ったウイスキー。この箱は今でも覚えている。これはオルゴールつきの瓶だ。とろっとした優しい色合いの液体の中で、音楽に合わせて人形が踊る、凝った作りのウイスキーだった。

私は箱を開け、中身を出してみた。そして、唖然とした。
思っていいたよりずっと小さい瓶。いかにも安っぽくて、ずっとずっとちゃっちいデザイン。オルゴールからはやたらとテンポの早い『白鳥の湖』が流れ、その音色は私に、ドンキホーテに売っている白鳥の首と頭のついた宴会用のパンツを思い出させた。
外国の物だと思っていたのに、製造されたのは静岡県だと書いてあった。
裕福な紳士にもらったなどということは100%ないだろう。

いつかはウイスキーの味がわかる人間に――ひそかにそんなことを考えていたが、誓いを立てるほどのことをしなくてよかった。私はいまだにウイスキーのことなんててんでわからないが、少なくともあの瓶にロマンティックな思いを抱いたまま真っすぐ成長していたら大変なことになっていたと思う。

しかし、瓶の中で人形を踊らせてしまおうという発想はなかなか好きなのだが。馬鹿馬鹿しくて。真剣なところがなおよろしい。

馬鹿馬鹿しいことを真剣にするほど魅力的なことって世の中広しといえそうそうない。

祖父よ、そして想像上の老紳士よ、私はこんな大人になりました。


19 comments:

  1. わたしはウイスキーのラベルを描いています。

    あなたと同じで両親は下戸でしたが、
    あなたと違って、わたしはウイスキーに魅入られました。

    わたしにとって、とろっとした優しい色合いの液体は「これこそが紳士」という妄想からの強い憧れでした。

    ジェームスボンドとデキャンタに入ったマッカラン。
    セントオブウーマンのアルパチーノがジャックダニエルしか口にしないこと。
    ウイスキーこそ「ダンディズム」だったんです。

    あなたの「想像上の老紳士」と、わたしの「ダンディズム」が重なったような気がしてメッセージを残しました。

    「特にウイスキーやブランデーなんてハイカラの極みを~」の件は、アンティーク家具と重厚感のあるカーテン、机上のヒュミドール・・・完璧なイメージとして伝わりました。

    実は、わたしは「誓い」を立ててました(^-^)

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  2. 古いものっていいですよね
    最高です
    ウイスキーのコマーシャルもいいですね
    好きでした

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  3. うん、確かにヤスモノっぽい。

    でも幼少期、大人がみんな大きくて正しく見えた、なんてのと
    同じなんでしょうね。
    幼少期の妄想の中を延々と漂って、生涯を終えそうな気がします。

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  4. http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0605&f=national_0605_030.shtml

    こんな報道が出ていますが、真実でしょうか。
    真実なら少し残念です。
    私は祖国や家族を守るために命を捧げた祖父や当時の日本人を誇りに思っています。
    それにあなたのような美しい女性が謝罪でセックスするのはもったいないです。

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  5. を見て同意
    反日するなら中国にでも移住してください
    偏った見方での知識しかないみたいだけども、
    少しは自分で情報探して今までの知識と照らし合わせてみたら?
    それでも疑問が湧かないのなら構わないけど・・・

    オイラは隣国の反応の異常さを感じ始めてから見直したんだが、それからは常に疑問に思うようになったよ

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  6. http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0605&f=national_0605_030.shtml

    同じくファンとして残念な報道です。

    真実かどうかは怪しい出どころのニュースなので分かりませんが、違うなら否定してほしいです。

    日本人女は悪い奴らだから犯してしまえって言い出すのが彼らなので・・・・。

    本当の歴史を知りたいならこちらをどうぞ・・・。

    http://www.nankinnoshinjitsu.com/

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  10. ニュース記事で鈴木杏里さんが日本の中国に対する侵略に心を痛めて申し訳ないと思っているということを知りました。
    たしかに、日本の侵略は絶対に良くないことだと思います。
    侵略は絶対に良くないことです。

    侵略は良くないこと。
    では、それなのになぜ当の中国は侵略をするのでしょう。
    侵略される痛みを知っているはずの国なのに。
    もともと中国の歴史は侵略の歴史でもあります。
    現在もチベットなどを侵略しています。
    周辺国の島を乗っ取ったりもします。
    また侵略にレイプはつきものです。
    自分たちの民族を広げるのも目的なのですから。
    同化政策も似たようなものです。

    日本は中国に謝罪もしていますし
    ものすごい援助もしてきました。
    けれど、中国はいくらでもつけ込んできますし
    援助を受けている事実などは国民に隠しています。
    そして反日教育をしています。

    日本が中国にした以上の謝罪を
    中国は中国の侵略国にしたことはありません。

    このようなことを考えると鈴木杏里さんのような心境になるのはとても不思議でしょうがありません。

    鈴木杏里さんの謝罪の仕方にしても、とても自分に都合の良い物にしか思えません。
    しかも、なんだかんだ日本人より中国人の方が気持ちよかったとか言ってしまっているし。
    とても気持ち良いことして謝罪になるなら、いいですね。
    従軍慰安婦の方々も案外あなたのように思っていたかもしれませんよ。
    気持ち良いし、金になるし、戦後は被害者ぶっていればいいだけのことだし。

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  11. 報道内容はガセですか?

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  12. なんか、コメントが暴力的になってるなぁ。

    真実が不確かで、どれだけ、フィルターにかけられてるかわからない情報に対して、
    暴力的過ぎる気がするなぁ。


    ところで、ウイスキーのボトルだけど、
    僕はこの歳になっても、まだ同じような感情いだいてしまうな、、
    ウイスキーではなく、ボトル自体が好きなんだけどね。閉じ込める感じがね。
    丁度、このボトルに入ってる人形みたいなコンセプトで、小さなプロジェクトを友達とやりたいと思ってたとこだし、、
    良かったら、参加してくださいな。

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  13. おいおい。記事を真に受けてるメンバ

    うら取ってるか?
    何でも鵜呑みにすると
    あとで後悔するのは自分だぞ

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  14. 中華ソースの信憑性なんてゼロ
    信じるバカが多いから、早く否定した方がいいよ。

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  15. hi l'm china student...
    l'm so glad to know yours new.
    l am your fans^^

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  16. お察しします。
    大変なことに巻き込まれているようですが、告訴等のご準備をされたほうがよろしいかと思います

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  17. 杏里さんの、自分にできることから実践しようとする、草の根的精神に感銘を受けました。
    国と国との無益な議論の応酬よりも、一人一人の市民どうしの触れ合いこそが交流の最も重要な基盤になると思います。

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  18. yahooニュース見ました
    杏里さんのそれへのコメントも見ました
    どうやら台湾人の捏造記事だったみたいですね
    それにしても酷い記事でした
    むこうの行為が許せないですね
    むこうの人たちが日本のAVが大好きなのは有名です
    あの記事はAV大好きな台湾人のそうであって欲しいという強い願望記事だったんでしょう
    本当に日本人なら誰もが不快になるような記事でした

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