Sunday, April 18, 2010

包まれる美学




以前から気になってはいたのだが、展示会に行ってから、ますますクリスト&ジャンヌ・クロードの世界に夢中になった。

出会いはワタリウム美術館の本屋だった。クリストのクの字も知らなかった私だが、偶然手に取った写真集を見て、体がぞくっとするのがわかった。

高倉健写真集か彼らの写真集、どちらかを買おうかと真剣に悩んだが、ここで買わなくてもアマゾンならば安く手に入るかもしれない、とその時は重たい荷物を抱えずに帰った。しかし、帰ってアマゾンで検索してみると、目当ての写真集は二冊とも、本屋と同じ信じられない値段のままだった。送料のことを考えると、また今度ワタリウム美術館に行った時に買えばいいだろう、と欲しい気持ちを必死に押さえ、私はおとなしくつまらない日々を送っていた。

が、ある日クリスト&ジャンヌ・クロード展が開催中だと聞いて、いてもたってもいられず、聞いたその足で観に行ってきた。写真集よりずっとお得感がある。何せ実物の写真を生で見られるのだから。

説明が遅くなったが、クリスト&ジャンヌ・クロードとは、ご夫婦で創作活動をされていた芸術家で、二人は同じ年の同じ日に生まれた。
何でも包んでしまう、とんでもない作品は芸術というかプロジェクトであり、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを与えてくれる。

晩年に撮影されたエキセントリックなポートレートばかり出回っているが、若かりしころはこんなにお洒落で洗練されていたようだ。
この、ジャンヌ・クロードのファッションなんか、今着ていてもまったくおかしくない。これを見て、豹柄のタイツを捜しまわったが、残念なことに似たものはどこにも売っていなかった。
展示会でも例の写真集は法外な値段のまま売られており、さすがに手が出なかったので、代わりにこちらの薄めのものを買って帰ってみた。




こういった、誰にでも作ってしまえそうなものから、このように規模の大きいものまで、



さまざまな作品が解説付きで収録されている。バイクだか自転車を包んだものが載っていなかったのはすごく残念だっだが。

このウェディングドレスなんて、本当によくできていると思う。斬新さはもとろん、このデザインは結婚の何たるかを一目見てわかるように表しているではないか。


結婚とは、重荷を引きずって歩くようなものだ、と。


この包まれた電話は、実物が展示されていた。こんな状態でも鳴るらしい。不便そうなところがたまらない。

そうなんだよな。不便さ。これが肝心なんだ。

私の好きなクリスト&ジャンヌ・クロードの作品は、スケールの大きなものよりは、日常の中にあるものを包んでしまった作品だ。なんでかな、と考えてみたら、やはりその不便さを激しく魅力的に感じていることに思い当った。

壊したわけではない。中のものには一切傷はついていない。ただ包んだだけだ。

ただ包んだだけでそのありふれたものは、物として機能しなくなり、単なるオブジェと化す。

布やシートの裏側で、役割をまっとうできない物の不平や嘆きが聞こえてくるようで、それが最高にぞくぞくする。これ以上ないくらいに官能的だ。

私は不便そうなものに弱いのだ。怪我した動物なんかたまらない。エリザベスカラーさえしていれば、どんな馬鹿猫も、どんなに臭い犬も、もうなめ回したいほど可愛く見えてくる。亀甲縛りにされた美女ではなく、動物やら、いたいけな人間の写真なり絵があれば、ため息の出る毎日をもっと生き生きと過ごせるに違いない。

眼鏡っ娘に萌える男性にも同じような心理が働いているのかもしれない。

まあ、私の場合、不便そうに見えるからといって何かをしてやりたいわけではなく、その不便さを陰からこっそり見ていたいのだが。

困っているって、人でも物でもたまらない良さがある。

困っているようだけれど何もしてやれないんだ。ごめんよ、へっへっへ、とほくそ笑む快感といったら!

こんなことを考えている私は、別に変わり者でもなければ、変態でもないと思う。

クリスト&ジャンヌ・クロードの作品がこんなに、展示会まで開催されるほど世の中に受け入れられているのがその証拠だ。少なくとも、私はそう信じたい。














10 comments:

  1. 鈴木さんこんばんは。

    ワタリウムのオンサンデーズには、僕が今の鈴木さんぐらいの時はちょくちょく行っていたんですよ。懐かしい。
    あと話に出ていたクリストの環境芸術とかあの辺の作家のものとかみたりとか。
    鈴木さんの話聞いていて、ボンデージアートが好まれる心理が理解できました。
    そういえば、鈴木さんも包帯モノに出ていましたね。

    ではまた。

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  2. Previously had a grand act - packing City

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  3. 包むという発想が奇妙ですね
    色々な変わった芸術があるんですね

    高倉健好きなのですね
    任侠物は好んで見ます

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  4. なんというか感性が文学的ですよね♪
    好きだ★
    杏里さん尾その考え方が、
    オタクだけど愛らしい趣味、思考&嗜好が!

    ホント面白いブログですwww

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  5. 杏里さん、こんばんみ~。
    杏里さんのおかげで、また新しい人を知りました。
    なかなか素敵な展覧会だったみたいですね。
    でも、その作品に負けず、今回の杏里さんの画像も素敵ですよ!

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  6. クリストは昔かなり好きでした。

    まあ、ずっと同じ事をやってるんで、だんだん飽きてきたというのはありますが。
    結構楽しいのはプロジェクトを進める時に書いているスケッチだったりします。

    結構最近お亡くなりになりましたよね。
    違ったかな?

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  7. This comment has been removed by the author.

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  8. 本の著者で、展覧会のディレクターを務めた者です。

    確かに高い本で、ゴメンナサイ・・・でも内容は充実していると思います。

    なお、ジャンヌ=クロードは昨年の11月18日に急逝いたしました。クリストはまだまで元気です。

    ちなみに、クリストとジャンヌ=クロード展のおかげで、杏里さんのことを知りました。

    ファンにならせていただきます!

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  9. 包むっていうのは、いろんな意味で女性の本能的な感じする

    包まれて、守られているのは心地がいい
    でも、そこから抜け出すのは大変
    包まれて、抜け出して
    生きるのってその繰り返しのような気がする

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